早稲田医療学園内を彩るすべてのアートワークは、モダンアート「コブラ派」の旗手・中島由夫画伯が本学の建学の精神に共鳴され、教育と芸術の融合を目指して制作されたものです。中島画伯の業績とともにコブラ派の画風を今に伝える貴重なコレクションです。

教育と芸術の融合

学びとアート-崇高なるものとの出逢い

 人間も含めて、人間の最小単位は細胞(Cell)です。従って生命の本質も、その一つ一つの細胞の中に存在します。ですから生命が個として自立的に意志を持って生きることの本質も、細胞のコミュニケーション(特にニュートラルネットワーク)にあると考えられます。その細胞(Cell)が集合体となり、それらの相互関係がやがてこころ(意志)となり、世界が創造され、ユニティーとなって織りなされていく-人間総合科学大学の校舎のコンセプトは「いうなれば一個の細胞のような」というつぶやきから生まれたのです。

 芸術とは何か…己の深い(超意識の)部分にあり、己を突き動かす魂との絶え間ない対話。言い換えると、宇宙的な普遍なるものの呼びかけに応じる人間の創造的精神の応答であると考えます。

「我々はどこから来たのか、我々は何者か、我々はどこに行くのか。」
'D'ou venons-nous? Que Sommes-nous? Ou allons-nous?'
これは有名なゴーギャンの言葉で人間の永遠のテーマであります。

 この深遠な問いに答えようとするのが、感情や情操や想像力と通じ合う事故を表現しようとする芸術活動であると私は思っております。原始的な自己を表出しようとする、已むに已まれぬ衝動にも似た精神活動が形を変えて絵や音楽といったARTに表されていると思うのです。
 それは動物にない、人が個人を超えて普遍的に共通にもつ想い…永遠なるものとの精神の共鳴への憧憬…この精神こそ人間の人間たる所以なのです。

サンセット・サンライズ

「学ぶ者」のこころの原風景として

 人間がまっしぐらに生きるためには、その原点にある、自然、地球や宇宙をかんじることはとても大切です。これは、人間総合科学の学問的な大地を形作る理法-宇宙が創造され、太陽系と地球ができ、生命そして人間が誕生する-ともなっています。そのなかで一人一人が命の意味を感受し、つかみとるには自然の法則に対し飽きなき探求を続け、自然との調和や共生を意識し、自らの成長とすべての諸象を包摂しようとする精神の涵養が大切なのです。
 ここに、人間性を育む教育にはプロセスや環境の随所に芸術性を必要とする所以があります。人が生きる上で、心をより豊かな広がりへと導き、人に喜びの萌芽を感じさせます。ゆえに、人間らしくよりよく生きるためには、「深い思い」「魂」を解き放つ場を持つことが必要です。そこでは自然に還ること、ARTの表現に集約される自然に理法に触れることができます。そこに動物とは異なる、人間として継承を続け、進化し、成長してきた精神(こころ)の軌跡があると思うのです。

 学ぶ者にとって知識や技術より、もっと根源的に必要なことは「人間たる所以」を育むことです。それは、人が自然とともに生きて、働いて、暮らす、生命の輝きを得ることでもあります。人間総合科学大学は、「こころ」「からだ」そして「文化文明」を通じて人間を深く広く理解し、よりよく生きるために人が学び、成長し、修練する場です。

 本学は大学キャンパスでありながら、中島由夫アートの世界でもあります。私の教育者の魂と中島先生の画家の魂とが融合して未来に生きる人々への愛と希望を託して建てられた校舎です。大学1階のエントランス吹き抜けには中島先生の「サンセット サンライズ(日は沈み、日は昇る)」と名付けられた作品が展示されています。巨大な細胞(Cell)の核を思わせる作品で、本学にとって象徴的なものとなっています。中島先生の絵画は、校舎のどの場所にも掲げられ、中島作品から沸き上がるエネルギーを全身に受けながら、学生たちがしなやかでしたたかに人を愛し、自然を愛し、生命の輝きをその身に湛えることを願っています。この学ぶ者の心のふるさと(母校)には、いつも暖かで力強い太陽が昇り、そして同胞愛に戯れる生き物たちが彼らのこころの原風景として住み着きますように…という祈りがあるのです。

学校法人早稲田医療学園理事長
人間総合科学大学学長
久住眞理

サンセット・サンライズ サンセット・サンライズ